2024/07/03 23:02
梅雨が明けたその日、彼は久しぶりにランニングに出かけた。空は晴れ渡り、夕焼けがアスファルトをオレンジ色に染めていた。雨の匂いがまだ微かに残る田舎道を走るのは、彼にとって特別な時間だった。
道沿いには田んぼが広がり、その中をゆったりと泳ぐトンボたちが目に入った。彼は心地よい風を感じながら、足を進めていく。梅雨明けの空気は清々しく、汗が吹き出すたびに心地よい涼しさを感じた。
ランニングの途中、彼はふと足を止めた。田んぼの脇に広がる草むらの中で、小さな光がちらちらと輝いている。蛍だ。彼はその光景に見入った。蛍の光が静かに点滅する様子は、まるで夏の訪れを祝っているかのようだった。
彼はしばらくの間、蛍の光を見つめていたが、やがて再び走り始めた。夕焼けがますます濃くなる中、彼は自分のペースでアスファルトを踏みしめた。ランニングの終わりが近づく頃、田んぼの向こうには薄暗い空に浮かぶ星が一つ、また一つと姿を現し始めた。
家に戻ると、彼はシャワーを浴び、汗を流しながら今日のランニングを振り返った。梅雨明けの夕暮れ、雨の匂い、トンボ、蛍…それらが彼の心に深く刻まれた。
「また明日も走ろう」そう心に決め、彼は眠りについた。梅雨明けの夜、外では蛍が静かに光を放っていた。